従来機として「CKM9-70GL」という丸鋸面取切断機がありますが、開発されたのが20年以上前と基本設計が古く、現在ラインナップしている機械と比較して操作性や生産性で見劣りする部分がありました。また、従来機ではワーク毎に行う段取りが非常に多く、多品種小ロット生産の現場では段取り時間が生産に大きな負担をかけているという問題もありました。
そのため、新機種では「段取り替えの工数の削減」「操作性の改善」、そして「高速化」をクリアすることを最優先課題と位置づけ、従来機の基本構想を見直し、生産性の大幅向上をめざして開発がスタートしました。
従来機とは制御方法を変えざるをえないため、制御技術課の担当者はそれ相応の艱難辛苦を味わいました。しかし、その甲斐あって課題であった段取り替え工数に関しては、従来機に対し約50%の削減に成功し、操作性についてもボールねじ+サーボモータによる数値制御を標準にしたことで、推奨条件での自動切削が可能になりました。
また、両端加工部分の段取り性を向上させるために新機構を採用した結果、動剛性が低下して加工品質が悪くなってしまう問題が発生し、原因の解明と対策に多くの時間を費やしました。再三にわたる設計変更、試行錯誤を重ね、設計はもちろん現場も苦難の連続でした。
こうして生まれた新製品「TKM80GL」は、弊社主力機種の超硬丸鋸切断機「TK-80GL」に、両端加工機「TMB-53」を1台に合わせた機械で、パイプ材およびシャフト材の切断、両端加工の2工程を同時におこなうことができる省スペースの複合加工機です。
長年培った切断機のノウハウと両端加工の最新技術を融合し、さらに機内のワーク搬送にACサーボ駆動の高速インデックス装置を採用することで、高い生産性と安定した品質を高次元で実現しました。また、段取り性にも配慮しています。従来機である「CKM-70GL」に対し、素材キャパシティアップ、加工時間の短縮、段取り時間の削減を達成。これにより生産性を大幅に向上させることができました。
企画の段階から開発プロジェクトに携わり、営業担当をはじめ社内各部署の担当者はもちろん、従来機ユーザ様との打合せもかつてないほど繰り返しました。ハイエンド機種の設計、製作は苦難が多いですが、そのぶん最新技術に触れ、学ぶ機会も多く、私たちもチームも技術者として大きく成長できました。
この分野に関してはまさしく第一人者になれたので、やりがいのあるプロジェクトでした。社外を含む業界全体を見ても切断両端加工機という製品は独自性が高く、動作も迫力があって見栄えが良く、とても開発し甲斐のある機械だったと感じています。